「あぁ~もっかいやり直したい!したら次は絶対優勝するし」

「ちょ…まだ言ってんの?いいかげん諦めなよ」

「はいはい。まぁ優衣だけ出れない時点で優勝しても素直に喜べない感あったからしょうがないんだけどさ…」


溜め息まじりにボヤきながら、ようやく手付かずだったおにぎりのラップを開き始める。

そして口いっぱいにして頬張ると、私の方を見て話し始めた。


「それよりも優衣、問題は隼人だよ。
あいつ、めったな事じゃ気にもしないあっけらかんタイプのくせに、ここ一週間妙に覇気がないっつうか、心ここに在らずみたいになっちゃって。優衣は何か知ってる?」

「えっ、し、知らない……」

「そっかぁ。ただ、ついちょっと前まではいつもの隼人だったと思うんだけど、何かあったのかな~」


あった。

それもほんのつい一週間前。


放課後、隼人と一緒に帰る約束をしたはずの日に。


でもそれが本当に今、隼人の元気がない理由なのかは分からない。




だって……




「隼人だってさすがに落ち込むことくらいあるよ。でもまたしばらくしたら元気になるんじゃない?」




気にかけてくれても

心配してもらえても。



隼人にとって私はもう『妹』のようでしかない存在だから……。