TEARS【~君色涙~】

「!…優衣」

「……」

「き、急にどうしたんだよ…?もしかして怒ってんのか?」



うつむいたまま顔を見せようとしない私に、隼人が後ろで尋ねる。


この時、ちょっとでも気を許したら泣いてしまいそうで。

しばらくの間、かたく唇を結んで沈黙していたあと、私は首を横に振った。


「なら何で…」

「……」

「一緒に帰ろうって約束しただろ…」


隼人のまっすぐな優しさが、今は逆に苦しくて


「……」


藤原さんの言う通り…

私は隼人の元カノで

別れたいと告げたのも私から。


だからお互い離れていた間に、
隼人の気持ちがあの頃と変わっても、私はそれを責めることはできないし、黙って受け入れるべきなんだ。


それはちゃんと分かってる、分かってるのに…



「……あのね隼人。私は隼人の、妹じゃないよ……?」

「……」

「隼人が心配しなくてもちゃんと、一人で帰れるから……」




だから……



「ばいばい…」



消え入りそうな声でそう言って、私はこの場を後にしていく。


隼人ももう、あとを追いかけてはこなかった。








人気がない廊下へと辿り着いたところで、私は力尽きたように壁へと持たれかかる。




そしてしばらくの間、ひとり放心していたあと

とっさに顔を両手で覆い、声をあげて泣いた。





“今の俺にとって優衣は、ほっとけない可愛い『妹』みたいなもんだから”




優しくされても


傍にいてくれても。




今、隼人の心の中に


私はもう居ないんだ……