手持ち花火はもちろん、ロケットや打ち上げ花火も全部やって、

残るは…線香花火。


パチパチと音をあげては何度も枝分かれしていくさまを、地面にしゃがみ込んだ私は食い入るように見つめる。

でも途中…ふとある事を思い出してか、とっさにバッ!と頭を伏せてしまった。


線香花火片手に何故かひとり悶絶する私を、傍にいたユカリがキョトンとした目で見てくる。



「え、どしたの優衣?思いだし笑い?」

「~~~っ」


い、いえ…

これは思いだし笑いならぬ、思いだし赤面というやつでして…


チラ…と顔を上げると、向こうにいる隼人も弘毅くんらと共に線香花火を楽しんでいるようだった。


男子たちと談笑しながらも、目線は手元の線香花火をジッと見つめている隼人。

その眼差しに胸がドキドキする。


するとさらにあの日の記憶が鮮明に蘇って、また悶えてしまった。



「……はぁ」


頭の中、胸の中

私の全部、もう隼人でいっぱいだ。


初恋を思い出す隙間なんてないくらい……


隼人は?

隼人の心の中に、私はちゃんと存在しているんだろうか。

少しでも居るといいな。

なんて……


線香花火を眺めながら、見えない気持ちに想いを馳せる。


同時に


火の玉が、ポトリと落ちた。