TEARS【~君色涙~】

この時見た先輩の顔を、私はきっと忘れない。

あんなに穏やかで
まるで気を許したように笑うその、はにかんだ表情を。


「…先輩」


そっか、やっと両想い――なれたんだ。

加奈子さんと。


きっと新しい高校に行って、二人を繋ぎ止める何かがあったんだろう。

久しぶりに見る広瀬先輩は、もうあの日のような目をしていない。

曇りない真っすぐな眼差しで、ただ愛しげに加奈子さんを見つめていた。


そしてそれはもちろん、加奈子さんも。

先輩たちが見えなくなったあと
さっきまで怒っていた気持ちも忘れて
急にしおらしくなる私に、隼人が黙って胸をかしてくれた。


「っ、ごめん隼人…」

「いいよ、分かってる」


その言葉に安心して身を寄せると同時に、一筋の涙が頬を伝わっていく。


ようやく気持ちが通じ合い、ただただ幸せそうな二人の姿を見て
なぜだかふっと肩の荷が下りた気がすると同時に
私の初恋は、これで本当に終わりを告げたんだと思った。







目の前には、様々な人の願いが込められた大きな箱。


この箱の中へ、私も静かにお賽銭を落としていく。



少しの間ジッと想いを巡らせたあと

両手を合わせた私は目を閉じ、こう祈った。


「……」


広瀬先輩と加奈子さん

二人がこれからもずっと、幸せでありますように……。