隼人が遠いよ……。


「つって、一番の理由はまた別にあるんだけど」

「え?」


すっかり打ちのめされたように半分意識が遠のいていたら、隼人がふいにボソリと何かを呟く。


雨音のせいもあってかよく聞き取れなかった私に、隼人はなんてことない様子で笑った。



「なんでもない」







今日は途中でさよならするつもりが、結局家まで隼人に送ってもらってしまった。


「じゃあまたな」

「うん。それと傘入れてくれてありがと…」


それ以上は言葉を交わそうとせず、私はクルッと背を向けて家に入ろうとする。


でもこの時、雨で階段が濡れ浸っていたせいか、とっさに足を滑らせてしまった。


「!」


その瞬間、視界が一気に反転して身体ごとひっくり返りそうになったとき、グイ!と腕を掴まれた。