とっさに声を上げたところで時すでに遅し。


思わず伸ばした手の先では、
私が落とした紙を拾い上げようとして、何やらピタリと固まった様子の隼人。


でも目線は確かにその中身を見ていた。


私は情けなさと恥ずかしさで自分の顔を両手で覆う。


「だから、見ないでって言ったのに……」


声に出したら余計自分が惨めに感じられて涙が一気に流れて止まらなくなった。

そのまま封を切ったように、わぁーっと声をあげて泣くわたしに、隼人が急いで駆け寄ってくる。


「わ、わりぃ優衣…俺そんなつもりなくて」

「っく、うぅ…」

「もしかしてずっと落ち込んでたのか?」


隼人の言葉に私は何度も首を縦に振る。


…こんなみっともない姿ばかり晒して、呆れられたと思った。


今まで私がぼんやりとしていた間にも、隼人はいつのまにかずっと遠いところにいて

見かけだけじゃなく中身も大人に近づいていた隼人は、もう手の届かない人にすら思えたんだ。


「…自分なりに頑張ったんだよこれでも」

「……」

「でも、出来ないものは出来ないんだもん……」


見苦しい言い訳なのはわかってる。


でも隼人と付き合うようになってから毎日がすごく楽しかった日々や、初恋を忘れられず、ひたすら思い悩んでいた時間も。

そんなの努力してきた人たちに比べたら、ちっぽけでくだらないことなのかもしれないけど…

でも私にとってはどれもかけがえのない、大切な思い出で

無かったことになんて出来ない。