4月。まだ外の桜も風になびいている早朝。


キッチンの方から、なにやらトントンと階段を駆け上がってくる足音がする。


そしてガチャリと音がしたかと思うと、ドアが開いた。



「もう優衣?まだ寝てるの?
今日から優衣も受験生なんだからいいかげん早く起きなさいって…あら」



朝ごはん作りの途中だったのかフライ返しを手に、顔を出してきた母。

でもこのとき既に着替えを済ませ、鏡の前へと立っていた私を見て、どこか拍子抜けしているようだった。


いつまでも子供扱いしてくる母親にちょっと反抗するかのように、私はわざと澄まし顔で言う。



「寝坊なんてしないよ。だってもう中学三年だもん」




月日は早いもので、私ももう中学三年生。


今日から受験生です。