「……」


勇気を振り絞って伝えてみせた私に、先輩はしばらくの間黙り込んでいたあと、こう返事をしてくれた。


「悪いけど…ごめん。他にこれ、やりたい奴いるから」

「……」


先輩が第二ボタンをあげたい相手…。

それはきっと、幼なじみである加奈子さんのことだ。


思わず溢れ出そうな涙をこらえようと、私は気丈になって頷きかえす。


「分かりました。その代わり高校に行っても…先輩があげたいっていうその好きな人と、幸せになってください」



分かっていた通り、広瀬先輩から第二ボタンを受けとることは出来なかったけど…
一番伝えたかったことを先輩に直接言うことが出来ただけでも、後悔はしていない。



先輩がいなくなったあと、
震えだす肩をユカリとみーちゃんに支えられながら、私は声をあげて泣きじゃくった。




どこからか吹いてきた春の風が、桜の花びらを散らしていく。




(さようなら、先輩……)




こうして、私の長いーー約二年間にも続く片想いは…静かに幕を閉じた。