「優衣にとって広瀬先輩は初恋だから2番目に好きになった隼人が霞むのも分かるよ。
ただ、今までそんな優衣を支えてくれたのは隼人でしょ。いくらなんでも隼人が不憫なんじゃないの?」

「……」


みーちゃんの最もな指摘に、何も言えなくなった。

とたんに重苦しい空気が流れて、ユカリが慌てたようにフォローを入れる。


「そ、そうだよ優衣!そりゃあ広瀬先輩のが隼人より何倍もかっこいいのは分かるよ?
でもそれでいきなり別れようってのは、さすがに隼人がかわいそすぎるんじゃ…」

「ユカリ、あんたはちょっと黙ってなさいよ」


みーちゃんにねじ伏せられ、あのユカリが「ウッ」とすごむ。

そんな二人を前に、私はゆっくり首を縦に動かした。


「…うん。みーちゃんが言う通りだと思う」


二人の言いたいことは痛いほど分かる。


隼人には、ひどいことをした。


今のままで十分幸せだったのに

私の身勝手な気持ちが、隼人を傷つけた。


でも……


「それでも私、やっぱり先輩に告白したい…」

「考え直す気はないの?」


みーちゃんの言葉に私はもう一度首を縦に振った。


「分かった。優衣がそこまで言うなら、私からはもう何も言わない」

「……」

「私は隼人と同じクラスだから、ちょっとアイツの肩持っちゃった。ごめんね」


このとき、張りつめた空気がやっと和らいでか、いつもの私たちの雰囲気が戻ってくる。


「そうと決まれば優衣は先輩に告白だね!でもその前にお腹すいた!お昼どっか食べにいこー!」

「……ユカリ、あんたって本当相変わらずだよね」


久しぶりに見る二人のそんなやりとりをどこか懐かしくも感じながら、三人で学校をあとにする。



外に出れば、おとといの台風が嘘みたく今日はやけに空が眩しくて、私は目を細めてみた。



…夏休み明けの今日、隼人に会うことはなかった。

始業式もクラスが離れていたせいか、見かけることすら出来なかった。



下を向くと、地面には風によって吹き飛ばされた小さな枝や木々が散らばったままで。


「……」


台風は色んなものを持ち去っていった。


交わした約束や、夏の思い出。


…隼人を想うこの気持ちも…。


全部どこかへ持って行ってしまった。