次々と走り去っていく軽自動車やバイクを見送りながら

再び静けさを取り戻した路上で、隼人が肩を落としたように嘆く。


「なんか、タイミング悪いな色々と…」

「……」

「けど祭りの日は絶対会いに行くから。その…待っててほしい」


その言葉に、私は笑顔で頷き返す。

すると隼人がぽつりとこんなことを呟いたんだ。


「まぁ決勝っつっても、最後まで勝ち残れるか分かんねーけど…」

「そんなことないよ。だって隼人のチームには」


広瀬先輩が……


そう言いかけようとして口をつぐんだ。

急に黙りこんでしまった私を心配してか、隼人が顔を覗きこんでくる。


「優衣?」

「…ううん。だって皆毎日こんな頑張って練習してるんだもん。絶対優勝できるよ」

「……」

「当日、私は直接応援に行けないけど頑張ってね!」


心なしか声が震えだしていたこと、気がつかれていないだろうか。


笑ってごまかした私に、隼人は少しの間黙っていたものの

「うん、そうだよな」と、

どこか納得したように呟いた。


そんな私たちの隙間を、冷たい風が吹き抜ける。



「…雨、降りそうだな。早く帰ろう」


ついさっきまでは晴れていたのに急な夕立でも来るのか、空には漂う重たい雲が。


遠くでは雷の鳴る音が聞こえ、私と隼人は家路へと急ぎ出す。



「……」



“もう会えなくなる”




その言葉を振り切るようにして走りながら…


でも確かに
自分の心が揺れ動いていくのを感じた。