その言葉に、私はすぐさま部屋を飛び出していた。


慌てて家のドアを開けると少し離れた場所にはスマホを耳に当てたまま、スポーツバッグを背負って立つ制服姿の隼人が。


私はタッと夢中で駆けよる。


「隼人…!」

「ごめんな栗原。急に呼び出して」

「……」



このとき、隼人の口から何気なく出てきたいつもの呼び方に私の足がピタ、と止まる。


“栗原”


…今朝会いに来てくれた時も思ったけど、やっぱり優衣ってもう呼んでくれないや。

ちょっとだけ期待、してたんだけどな…


「……栗原、どした?」


いきなり立ち止まったかと思うと今度は黙りこんでしまった私に、
突然来てはマズかったのかと顔色を伺ってくる隼人。


そんな隼人を見て、私は首を横に振る。


「ううん、私も。隼人に会いたかった」

「……」

「部活、おつかれさま」


下の名前で呼んでもらえなかったのはやっぱり残念だけど…

でも今は部活終わって疲れてるはずなのに、隼人が真っ先に会いに来てくれたことが嬉しい。


気を取り直し、めいっぱいの笑顔を見せて笑うと

隼人はどこか照れたように目をそらしかけながら、こう呟いてきたんだ。