『―――!』

『じゃ、じゃあな』


まるで言い逃げするかのようにそう言って、隼人は無理やり通話を終わらせてしまった。

耳元で響く、ツーツーという機械音。


だんだんと私の口が開いていく。



「……」












だから不意打ちはズルい、ってば……!



耐えきれず、私は机に顔ごと突っ伏した。


赤く火照った顔に、どこかひんやりとした机の感触が心地いい。



(…優衣って呼ばれちゃった。隼人に)



低くかすれ、大人に少しずつ近づき始めてる隼人の声はどこか…色っぽささえ感じられて。


その声で耳元から名前を囁かれた瞬間、よく分かんないけど、どうにかなってしまいそうだった。



(明日もまた呼んでくれるかな。呼んでくれるといいな…)



しばらくの間その余韻を一人感じていたあと、私はゆっくりと顔をあげる。



「……」



この時ちょうど視線の先にあったのは、隼人がホワイトデーにくれたストロベリーの飴。


私はそれを1個手に取って包み紙を開けると、口の中へと放り込んでみた。



(……甘い)



あの日。


先輩のために作ったチョコとは違い




隼人がくれた飴は


ただただ甘くて…くすぐったかった。