そんな前から私のことを……?


「…最初は、純粋に栗原のことを心配してたんだ。広瀬先輩のことでまた栗原が泣いて傷つくんじゃねーかって」

「……」

「けど、そうやって毎日栗原のこと考えて気にしていくうちに、いつの間にか好きになってた」


次から次へと知っていく隼人の気持ちに、私の頭はパンク寸前。


しまいには無言にまでなってしまうと、隼人がさりげなく伺うような目で見つめてきた。



「…俺の気持ち、今まで全然気づかなかった?」



その質問に、私はただコクリと頷く。

気づくも何も、私自身やっと最近隼人のことが好きだって気づいたのに…


「そっか。俺これでも結構分かりやすくアピールしてたつもりだったんだけど(その上をいく猛者が…)」

「ご、ごめん…」

「あっ、いや俺こそ。つか、ちゃんと伝えなかった俺が悪かった」

「……」


ちゃんと……?


隼人の言葉に、私は申し訳なく俯かせていた顔をあげる。


そのままジッと見上げると


隼人は一瞬緊張した表情を見せながら

でも真っ直ぐ私の目を見つめてきたんだ。


「なぁ栗原。俺と付き合わね…?」

「!」

「じゃなくて。俺と、付き合ってください」


そう言って、深く私に頭を下げてきた隼人。




このとき。


私は少しも迷うことなく、こう答えていたんだ。




「………はい。こちらこそ」





まだ穏やかな風が吹く5月。




この日


私と隼人は―――付き合うことになった。