TEARS【~君色涙~】

その声にハッとして目を開けると、廊下には息を切らした様子の隼人。

今も肩を掴まれたままの私を見て、隼人がすぐさま走ってくる。


「栗原から離れろよ!」


そう叫んで、隼人は私を吉川先生からガッと引き離すと、自分の方に引き寄せてくれた。


「あんた実習生だろ?栗原に手出してんじゃねーよ」

「……」


7つ以上も歳の離れた隼人の言葉に対して、
吉川先生はハナから相手にするつもりはないのか、何も言い返してはこなかった。

隼人が即座に私の手をとる。


「栗原、行くぞ」

「う、うん…」


隼人に手を引かれるまま、私も急いで教室をあとにしようとする。

そのまま廊下へと出ようとしたとき、後ろで吉川先生が
呆れたように呟いたんだ。


「あーあ、中学生が恋愛ごときでマジになっちゃって。純愛だねぇ。
どうせ別れんのに」


え……?

吉川先生の言葉に、私は思わず駆けていた足を止める。


とっさに後ろを振り返ると、吉川先生は澄ました顔で笑っていて。


そんな吉川先生に対して



「別れねーよ、俺は」



一言、隼人はそう言い返してみせると


私を連れて、この場をあとにした。