TEARS【~君色涙~】

「ねぇ優衣。誰あのイケメン」


次の日。

ようやく風邪も治り、学校に復帰してきた様子のユカリは、軽く浦島太郎状態だった。

たった2日休んでいた間に、教室にはなぜか見慣れないメンズモデル風男が生徒に囲まれている。

その光景を見て一人ポカンと口を開けていた。


「教育実習生の吉川先生だよ」

「えっじゃあ大学生?どうしよ、超タイプなんだけど。連絡先聞いちゃおっかな」


と言って、早速向こうの輪の中に突撃していこうとするユカリを、私は全力で止めておいた。

えーなんでよ、とユカリはしばらくブーブー文句を言って来たものの、思い出したようにノートを広げて見せたんだ。


「あっ、あとノートありがとね。超助かる」

「……うん」


嬉しそうに笑うユカリに、私も笑顔でうなずき返す。

……自分の意志でそうしたのだから仕方ないけれど、内心どこか複雑で。


もし昨日、一昨日と
私が教室に居残っていなければ

吉川先生とは必要以上に関わることもなく

きっと今ごろ、会いに来てくれた隼人と他愛もない話でも出来ていたんじゃないのかな……。



そう思って、私はまた教室の扉の方を見つめる。

でもそこに、待ちわびた人の姿はなくて。


「……」


この日。

隼人は私に、会いに来てはくれなかった。