TEARS【~君色涙~】

「何してんの?次の授業、視聴覚室でやるんだから早く移動しないと」

「あ…」


吉川先生はそう言って、私に教室移動を促してきた。

このとき、肩にはポンと置かれた吉川先生の手。


それを見た隼人がとっさに手を出しかけたとき、すぐに吉川先生は離れた。


「じゃあまた。後でね。…栗原さん」


どこか大人の余裕というような顔をして、吉川先生はクラスの子たちと一緒に教室を出ていった。

そんな先生を今初めて見たのか、隼人が露骨に顔をしかめる。


「…誰?あの人」

「教育実習生の吉川先生…。そっか、隼人のクラスはまだ社会の授業やってないんだね」

「……」

「そ、それより隼人。さっき何か私に言いかけてなかった……?」

「…いや、やっぱり今日はやめておく」



そう呟いた隼人の表情は、あまり機嫌が良くなさそうだった。


今すぐ此処では言えないような
なにか大事な話でも、あったのだろうか……