『ううん、もうないよ…』

『そっか』

『…あ、お母さんが呼んでる。もう切らないと…』


必死にスマホを耳元にくっ付けて会話をしていたら、もう片方の耳からお母さんの呼ぶ声がした。


『…なら、また明日な』

『うん…。わざわざ電話かけてくれてありがとう』

『それと、ちゃんと布団かけて寝ろよ。栗原の寝相悪そうだからな』

『……』


思わず蹴りを入れてしまいたくなるようなその一言も、今は隼人の優しさだって分かる。


『分かった。今夜はちゃんと布団かけて寝るね』

『うん。じゃあな、おやすみ』

『おやすみなさい』



名残惜しい気持ちをこらえつつ、静かに通話を切った。






日付が変わる瞬間

隼人に言われた通り、布団をしっかり首まわりまで被ってベッドに横になる。

そしてそのすぐ隣には、隼人からもらったテディベア。


それをぎゅっと胸に抱きしめて、目を閉じた。



「……」



気づいてしまった。


私、隼人のことが―――