TEARS【~君色涙~】

「それじゃあ隼人先輩、返事待ってますね!」


そう言って、女の子はぺこっと頭を下げたあと
タッと駆けて1年生の校舎へと戻っていった。


しばらくの間どこかあっけに取られていたものの
なかば強引に握らされた手紙を前に、隼人が口を開く。


「…ラブレターもらっちった。つかラブレターって今時あんま言わなくね?」

「!」


ぴらぴらと便箋をひる返しながらそんなことを呟いた隼人に、私はハッと我にかえる。

そして思わず隼人に聞いてみた。


「…は、隼人。もしかして今の子と付き合っちゃうの?」

「え、いやまさか。今初めて話したようなもんだし」


ほっ、良かったぁ。


……って

ん?


なんで私、今ホッとして……?


そんな自分の気持ちにふと疑問を持ったのもつかの間、

どこか何気ない様子で隼人がこんなことを言い出したんだ。


「けどまぁ一応、手紙の中身くらいは読んどくか。せっかく書いてくれたみてーだし」

「!」


そう言って、女の子からのラブレターをかばんの中に閉まい込んでしまった隼人。


あまりのショックに私は開いた口が塞がらない。


う、うそ…

どうしよう


今はその気がなくたって、手紙を読んで隼人の気持ちが変わっちゃったりしたら……



「それより栗原、さっき俺に何か言いかけてなかったか?」



思わずひとり愕然としていたところ

さっきの話を思い出した様子の隼人がこっちを振り返る。


でも私の頭ん中はもう今それどころじゃなくって…



「…っう、ううん、別に何も。言いかけてないよ……」



ただそう答えるしか、出来なかった…。