「……こんな一緒にいるところ誰か学校のやつに見られたら、また噂になるかもな」

「いいよ、もう。噂になったって」

「……」


今さらもう、先輩に知られてしまった所でどうなるわけでも
何かが変わるわけでもないのだから。


先輩のことを思いだしてか、つい黙りこんでしまった私に、隼人が「あ」といきなり後ろを指差す。


「噂をすればあそこに橋本たちが」

「え!?ユカリ!?」


ウソ?!と慌てて振り返ると、
そこにはただ街灯がポツーンと突っ立っているだけだった。


「うっそ~」

「~~~!」

「はい、本日2回目~」


この時、わざとらしくピースしてくる隼人の手を、私は無言で叩き落とした。


「いってぇ……ハエたたきかよ」

「もう信じらんない。バカじゃないの?」


でも、ありがとう隼人。

もし今日隼人が側に居てくれなかったら、本当にもうダメだったかもしれない。


今も叩かれた手を振って揺らす隼人を前に、私は小さく口元を動かした。


「隼人。私…今日でもう先輩のこと、ちゃんと諦めようと思う」

「…いいのか?それで」

「うん……」



目線はすっかり暗くなった地面を見下ろしたまま、ぎこちなく頷く。


いつもより風が冷たい。


「……」



この日


私は自分の心にーー嘘をついた。