「!!」
……え、
木塚くんはそう言うと、びっくりして固まるあたしの腕をゆっくりと離す。
…いま、木塚くん何て言ったの?
聞き違いかな?
付き合えって言われた気が…
そう思ってしばらく混乱していると、目の前の木塚くんが目を細めてあたしに言った。
「…おい、黙ってないでウンとかスンとか言えよ」
「!」
そう言って不機嫌そうな態度をとるから、あたしは我に返って木塚くんに言った。
「あ、ああああたしで良ければ…!」
「!」
「よろしく…お願いします」
そう言って、だんだん熱くなっていく顔をうつ向かせて頭を下げる。
するとその瞬間、上から微かに木塚くんが笑ったような声が聞こえてきて、少し恥ずかしくなった。
…高校二年の夏。
あたしは人生で初めて、“彼氏”という存在ができました―――…。

