龍也はそう問いかけると、ただ地面を見つめるだけの俺を見遣る。
違うって言いたいのにそのたった一言が出なくて、だから結局俺は怖いのかもしれない。
ずっと女なんか大嫌いで、
恋すら知らなくて、
女に触れたことすらなかった俺が、やっと“妃由”を見つけたから。
すると俺がそのままでいたら、そのうちまた龍也が口を開いて言った。
「…意味がわからないですよ。
ここまで俺に内緒で妃由さんに会いに来て、堂々と真実を伝えたその行動力と勇気はあるのに、一番大事なことが出来ないなんて。
それじゃあここに来た意味がないじゃないですか。情けないにも程があります。貴方がそんなだと、彼女は俺らが頂きますよ?」
龍也はそう言うと、目を細めて軽くため息を吐く。
…うるさい。
俺はそんな龍也の言葉を聞くと、そいつよりも大きなため息を吐いて、言った。
「…そんなの言われなくてもわかってるよ」
「…」
「……っつか、妃由は龍也や智輝のモノじゃない。お前が告白をOKしても、智輝が妃由と付き合い たがっていても、
結局、妃由が告白をした相手は俺であって、お前らじゃないから」
「!」
「妃由は今日から、俺だけの彼女だよ。勝手に指図すんな」
俺は龍也にそう言うと、次の瞬間妃由を追いかけるべく、すぐにその場を後にした。
「…生意気な弟ですね」
そして一方、そんな俺の後ろ姿を見て、龍也が独り言のようにそう呟いたことを俺は知らない。
…まだ、妃由に間に合うかな。

