あたしがお兄ちゃんに背を向けると、
その直後にそんなあたしを引き留めるようにお兄ちゃんが言った。
「俺が二人居たらいいのにな」
「!」
そう言うと、ソファーから起き上がる。
「…え?」
そんなお兄ちゃんの言葉にあたしがまた振り向くと、お兄ちゃんが言葉を続けて言った。
「…今付き合ってる彼女。全部で5人いるんだけどさ、俺のミスで今日のデートが2人重なったんだよ。
どーすればいい?妃由、」
そう言って、本当に困ったような顔をして見せる。
その言葉に、あたしは顔をしかめてお兄ちゃんに目を遣った。
…なんだ、急に何言い出すかと思ったら、そんな話か。
「知らないよ。そもそも普段から一人に絞らないお兄ちゃんが悪いんじゃん」
「げー!冷てぇ、妃由チャン」
そしてあたしがそう言うと、お兄ちゃんはそう言ってまたソファーにうなだれる。
「…俺が双子だったら、もう片方の奴に頼んでたのになー」
「…」
お兄ちゃんはそう言うけど、あたしは何人とも付き合っちゃうお兄ちゃんが信じられない。
何で一人に絞れないかな?
あたしはそんな最低なお兄ちゃんに冷たく背を向けると、自分の部屋に行こうとリビングを出た。
……けど。
ちょっと待てよ。
…双子…?

