【完】狂犬チワワ的彼氏



本当にこの人、あの“木塚くん”と同一人物なの?


そう思って疑ってしまうくらい…目の前の彼は、違う。


…けど、見た目はどう見たって木塚くんだし。

あの木塚拓海であることは間違いない…はず。


あたしは少しの間考え込むと、やがてもっと恥ずかしくなって木塚くんに言った。



「あ、あのっ…」

「ん?」

「あたし………帰るね!」

「!…は、」



そう言って、座っていたベンチから即座に立ち上がる。


なんせファーストキスだし。

木塚くんの隣にいるだけで、あたしは心臓がドキドキしすぎてどうしたらいいのかわからない。

それに、すっごく赤くなってるだろう顔を見られたくもないし…。



でも、そう思って木塚くんに背中を向けたその瞬間、そんなあたしの手首を木塚くんが掴んだ。



「!」

「…帰るって…。暇だから来たんじゃなかったの?」

「よ、用事思い出したから!」

「ふーん?」



そしてあたしがそう言うと、木塚くんもベンチから立ち上がって言った。



「じゃー送るよ」

「!!…えっ」

「…何だよ」



そう言って、びっくりするあたしにめんどくさそうな顔を向ける。


だ、だって…あれだよ!

この前のデートの時は送ってくれなかったのに!


…やっぱ、変だ。

今日の木塚くんはまるで別人!