でも…そうは言うけど、実際好きだったのは事実だし。

そんな簡単に諦めきれるわけもない。


確かに、木塚くんのことをよく知りもしないで告白をしたあたしも悪かったかもしんないけど。

正直、あんな酷い罵倒を浴びることになるなんて思わなかった。


…あたし、もう立ち直れない。


そう思って独りで凹んでいると、直樹が言った。



「…そういえば、妃由(ヒヨリ)チャン」

「うん?」

「今年の春に君、本を図書室から借りたまま、まだ返ってきていませんが?」



そう言うと、黒い笑顔でニッコリ笑う。


牧野妃由。それがあたしの名前。

直樹は図書委員に入っていて、週に一回の水曜日にこうやってカウンターに座っている。


…あー、忘れてた。


あたしはそう思いながら、直樹に言った。



「…今度返すよ」

「それ先週も先々週もその前も言われた」

「……」




ゴメンナサイ、直樹さん。

実はその本、まだ1ページも読んでいないのデス。