【完】狂犬チワワ的彼氏


「おいおいおい、お前この前アップルパイ作ってやったろー?」

「その日は俺だってジュース作ったじゃんか」

「あっ、あれうまかったよな!アップルサイダー!」


そう言って、勝手に盛り上がる二人。

何だかんだで、仲良いんだよな。

拓海くんは、楽しそうな目をしている。

そんな二人をよそに、龍也くんはまだゲームに夢中だし。

…っていうか、今日は本当に紛らわしいな。

龍也くんがゲームをしていて、智輝くんは似合わない読書をしていて(失礼)、拓海くんはキッチンに立っていたなんて。

いったい彼らのどこで見分ければわかりやすいんだろう。

あたしがそう思っていると…


「っつかカラオケ行きたい」

「は?急だなおい」


突然、智輝くんがそんなことを言い出した。

今の時刻は、お昼の15時。時間的にも、普通に行ける時間なんだけど。

そんな智輝くんに、拓海くんが言う。


「行ってくりゃあいいじゃん」

「お前も行くんだよ」

「バカか。俺は妃由いるから行かないよ」


そう言って、「な?」と。

ふいにあたしの方に目を遣って、同意を求める拓海くん。

あたしはその問いかけに「行きたい!」と言おうとしたけど、その瞬間に気がついた。

拓海くんの、目に。

拓海くんの、智輝くんへの視線は別に普通なのに、あたしに目を遣ったその瞬間、視線は優しいものに変わった気がした。