「たっ、拓海くんっ…」
「ん?」
拓海くんの名前を呼ぶと、彼の頬に、あたしからキスをした。
それは、一瞬だけの小さく触れるようなキス。
そんなあたしの突然の甘い行動に拓海くんは一瞬ビックリしていたけれど、やがて自身の口元に指をさして、言った。
「…するとこ違うだろ」
「え、」
「もう一回。するならここにして?ここ、」
「!…~っ、」
そう言って、あたしからのキスを待つ拓海くん。
けど無理!そんなの恥ずかしすぎて出来るわけないでしょ!
でも拓海くんは、「早く~」なんて言って待ってるから…
「…っ、」
凄く時間はかかったかもしれないけど(でも実際はきっと数分くらい)、あたしは勇気を出すと、今度は拓海くんの口にキスをした。
だけど、口を離したあとは恥ずかしすぎて。穴があったら入りたいくらい。
あたしは顔を真っ赤にして拓海くんに顔を背けると、いたたまれなくなって彼の部屋を後にしようとした。
…けど。
彼の部屋は、複雑だった。
実は、廊下に繋がるドアと、龍也くんの部屋に繋がるドア、そして智輝くんの部屋に繋がるドアの3つがあって。
【拓海くん家の事情/おまけ③】
(もーあたし帰るっ!恥ずかしすぎっ!)
(いやそこ龍也の部屋だし)
(じゃーこっち!)
(そこは智輝の部屋、)

