【完】狂犬チワワ的彼氏


ちゃんとゲーム機もゲームソフトも、持ってきたからね。

あたしはそう言うと、早速鞄の中からゲーム機を取り出そうとする。

けれど次の瞬間、それを阻止するように拓海くんが言った。


「いや、ゲームはしない」

「え、何で?ゲーム嫌い?」

「…そんなんじゃないけど」

「そっか…あ、じゃあどっか行く?今日天気良いから」

「…行かない」


あたしは何とかして場の雰囲気を盛り上げようとするのに、拓海くんは何故かちっとも盛り上がってくれないし、頷いてくれない。

…じゃあ何ならいいの。ってかどうして彼女のあたしがリードしてるわけ?

しかし、そう思って内心少し困っていると…ふいにその時、あたしの手に拓海くんの手が優しく重なってきて…


「…妃由」

「!」


凄く優しく、名前を呼ばれた。

…拓海くん…?

その声に、思わずビックリして拓海くんの方を見ると、意外と至近距離で目が合ってしまって。

そのことにも余計にビックリしてすぐに逸らすと、拓海くんがふっと笑って言った。


「…照れてるだろ。っつか緊張しすぎ」

「そっそんなこと…!ってか、拓海くんは緊張してないの?」

「してるよ。ただ妃由が緊張しすぎなんだよ」


もっと体の力抜けって。

拓海くんはそう言うと、意地悪く笑う。

そんな拓海くんの隣で、不貞腐れるように拓海くんから顔を背けるあたし。

…悔しい。何だかあたしだけが余裕ないみたいで。

だからあたしは、やがて意を決すると、拓海くんの方を向いて…