【完】狂犬チワワ的彼氏


そう言って、「ほら」と玄関のドアを開けてあたしを中に招き入れようとする智輝くん。

意外だ。意外すぎる。

智輝くんはあたしと一緒にいるのを一番嫌がりそうなのに。

だけど確かに中で待っていた方が楽だし確実だろうから、あたしはお邪魔することにした。


「じゃあ、お邪魔します」

「どーぞ。あ、その代わり中では半径2メートル以内に俺近づくなよ。お前何するかわかんねぇから」

「…それあたしのセリフなんだけど」


だけど…一瞬でも、ほんのちょっとでも智輝くんを感心したあたしがバカだった。

なんだかんだで彼は変わらないし、そう言ってあたしから本当に半径2メートル以上離れて行く。

ああもうムカつく!

でもその怒りを表には表さずに、あたしは靴を脱いで、智輝くんの後をついて行った。


「相変わらず広い家だよね」

「…広すぎて掃除が大変だけどな」


…ごもっともだ。

ってか、智輝くん掃除とかするんだ。

かなり失礼だけど、智輝くんの言葉に思わずそう思ってしまうあたし。


あ、そういえば、拓海くんに連絡しておかなきゃ。


そう思いながら二人でリビングに入ると、智輝くんは何故かそのままキッチンに入った。


「…?」