俺がそう言うと、妃由はその言葉に更に不機嫌そうに目を細めて言う。



「何を根拠にそんなこと言ってるの、」

「それはっ、」

「ただ見掛けだけの判断なんでしょ!?拓海くんって、そういう人だったんだ!?」



そう言いながら、珍しく本気で怒っている様子の妃由が、視界に映る。

しかもその目には、うっすらと涙が浮かんでいるのが見えて。


絶望?幻滅?


これ以上何かを口にすれば、全てが言い訳になってしまいそうだから。

俺が黙ると、妃由が言葉を続けて言った。



「あたしの友達のこと、悪く言わないで。いくら拓海くんでも許さない。

龍也くんの時だってそうだったじゃん。あたし…人の悪口を言う拓海くんは、嫌いだよ」



妃由はそう言うと、我慢が出来なくなった涙を拭う。

そしていたたまれなくなったのか、そのまま俺に背を向けると、妃由はその場を後にしてしまった。



「妃由っ…!」



その姿を見て慌てて名前を呼んでも、時はもう既に遅し。

妃由は振り向くことはなく、立ち止まらずに俺から離れていってしまった。



「…~っ、」



くそっ、何でこうなるんだよ…。