でも、とりあえず初対面の人にはなるべく優しく接するようにしている俺。
(それが妃由みたいに告白とかだったら例外だけどね)
俺が愛想良く笑顔を浮かべると、日向さんは嬉しそうな顔をして言った。
「今日は、拓海くんなんだ!?龍也くんじゃないんだ!?」
「!」
いきなりそう言って、本当に嬉しそうに笑って見せる。
けど、
いや待てって。そんなこと、他の生徒がうじゃうじゃいる生徒玄関で言うなよ!
「は…は?何言ってんの、日向さん。頭可笑しいから、」
そして俺がそんな日向さんに精一杯の苦笑いでそう言うと、日向さんはさっきと変わらない笑みを浮かべたあと…
「だっていつも、同じ顔をした他の兄弟達と、代わり万古で学校に来てるでしょう?」
「!!…───っ、」
不気味なくらいに落ち着いた声で、俺の耳元に口を寄せてそう言った。
その日向さんの言葉を聞いた途端に、俺は思わず勢いよく日向さんの方を振り向く。
「…な、何でお前、そんなこと…」
「…」
…確かに…龍也が昨日言った通りだ。
日向さんは、俺達の秘密を完全に知っている。
目が合った日向さんは、その表情だけは純粋な笑顔を浮かべていた。

