「ですがこの前、日向さんが転校してきた日にはもう既に彼女は俺達兄弟のことを知っていたのです。

それが何よりの証拠になりうるでしょう?」


「…いや、まぁ…それは明らかに怪しいけど」



でも、もしかしたら、忘れてるだけで本当は知ってる人とか…。

顔を見たらわかる…とかもあるかもしれないし。


まだそいつを犯人だと決めつけるには早すぎるだろー。


俺がそう思って考えていると、龍也が言葉を続けて言う。



「…拓海さん、逃げていては解決なんてできません。実際に目で見て確かめてみてはいかがでしょうか?」

「!!」

「日向さんが本当に犯人かどうか、自分で確かめて大事になる前に解決するんです。

これ以上被害が大きくなるとすれば、妃由さんにも何らかの罠を仕掛けてくる可能性だってありますから」



そして龍也は珍しく自分の意見を尊重すると、真剣な眼差して俺を見つめる。

その視線に、俺はやがて目を泳がせて…



「…そ、…そう、だな」



なんて、曖昧な返事をして黙り込んだ。


…龍也が、こんなに自分の意見を押してくるとか…珍しい。

いつもは意見を言われて、ただ「頷く」しかほとんどしない奴だったのに。


俺はそう思いながらも、しばらく考えた末───…やがて龍也に言った。



「…わかった」

「…」

「明日は、ちゃんと自分の学校に行くよ」



しかし、この決断が原因で後に悪夢を見ることになるなんて…


この時の俺は、もちろん知る由もない。