「っ、何で来ないの!?」



しかしあたしが寂しさいっぱいでそう聞いても、龍也くんははっきりとは教えてくれない。

何も答えずに、しばらくはオニギリを頬張るだけ。


…もしかして拓海くん、あたしのこと、嫌いになったり……してないよね?


あたしがそう思って不安でいると、やがてオニギリを完食したらしい龍也くんが、やっと口を開いて言った。



「…俺の口からは言えません」

「え、」

「ただ、妃由さんを嫌いになったからとか…そういうわけではありませんから、安心して下さい」



龍也くんはそう言うと、ふいにその場から立ち上がる。

そして、まだお弁当を食べているあたしをその場に残して…



「え、もう行く気!?」

「はい。だって、ご飯はもう完食しましたし。それにあの転校生だって、来そうにありませんから」

「そ、そんなぁ…」



そして龍也くんはそう言って、屋上を後にしようとした。


…けど、その背中をあたしが止めるのも、やっぱり何だか拓海くんに悪い気がするし。

少し口を膨らませてその背中を見送っていると、龍也くんがふいにあたしの方を振り向いて言う。



「…あ、そうだ妃由さん」

「?」

「今日の放課後、教室で待っていて下さい。迎えに行きます」



そしてそれだけを言うと、龍也くんは本当に屋上を後にした。