【完】狂犬チワワ的彼氏



「へぇー、意外!」


「…だから、あの人は凄くモテるんですよ。

性格が悪くていつも適当で人を物としか思っていないのに、料理とかの家事は大好きでいつも率先してやりますから」



ずるいんですよね、智輝さんは特に。


龍也くんはそう言うと、空を見上げながらため息を吐く。


ああ、要するに皆は智輝くんのギャップに惹かれるわけね。

性格悪いのに、意外に家事好きだから。

料理が出来るのは、確かにポイントが高いもん。

しかも、好きだったら尚更。



………って、待てよ。



“ギャップ”?



あたしはそのキーワードを頭に思い浮かべると、バッと顔を上げて龍也くんを見た。

ギャップっていうその一言が、妙に心に引っ掛かる。



「…何ですか?」

「……」

「妃由さん?」



そんなあたしを龍也くんが不思議に思ってそう呼び掛けるけれど、一方のあたしは急に拓海くんのことで頭がいっぱいで…

やがて全てのことにやっと気がつくと、あたしは呟くように龍也くんに話し出した。



「あたし…わかったかもしれない」

「え、」

「あたしが、拓海くんを好きな本当の理由が」