【完】狂犬チワワ的彼氏



その姿に思い切ってあたしが声をかけると、拓海くんはふと顔を上げてあたしを見た。

目が合った瞬間、拓海くんが微かに優しい表情をした気がしたけれど…もしかしたら、あたしの願望かもしれない。

あたしが声をかけると、拓海くんは「座れよ」って落ち着いた口調で呟いた。



「う、うん」

「……」



そしてその言葉に頷いて、あたしは拓海くんの向かいの椅子に座る。

店員さんが水を運んできてくれてそれを受け取ると、思わず緊張からか水を一気飲みした。


…そんなあたしの姿を、向かいから目を丸くして見つめる拓海くんに気が付くと…あたしは少し俯きながら拓海くんに言う。



「あ、ま…待たせてごめん」

「いや、別に」

「あ、あの…話って、何かな?」



そう言って、ぎこちなく拓海くんの言葉を待つ。

この何とも言えない空気が辛い。

本気で別れ話をされそう…にも感じてしまう。


そう思って待っていたら、拓海くんが言った。



「俺の話は後」

「え、」

「まずはお前の話から聞くよ」

「!」

「だって、妃由も俺に話があるからこうやって逢ってるんだろ?」



拓海くんはそう言うと、「さぁ言え」と言わんばかりにあたしを真っ直ぐに見つめだす。

まさかのその言葉に、あたしは目を泳がせながら、拓海くんから顔を背けるように俯く。


え、あ、あたしから?

そんなぁ…拓海くんの話が不安だし、早く聞きたいのに。


けど、そうは思っていても、拓海くんは譲ってくれなさそうな雰囲気だし。

あたしは渋々口を開くと、思い切って拓海くんに頭を下げた。



「この間は、ごめんなさい!」