【完】狂犬チワワ的彼氏



殴ろうと思って殴ったわけじゃないけれど、

気が付けば体が勝手に動いていた。

あたしは人を殴るのが初めてだし、こういうのも嫌っていたけれど…

さすがにこの男の考えだけは、我慢できない。


そしてそれと同時に、やっとわかった。

龍也くんがこの前、智輝くんを嫌っていると言ったその理由が。


あたしが智輝くんを殴ると、智輝くんは殴られた頬を抑えながら強い口調で言った。



「っ…何すんだよ!!」

「…っ、」



は?何する?殴ったんですよ、見ての通り。

…意外と手が、痛かったけど。

これって殴る方も結構痛いのね。


っていうか、そんなことよりも。



「アンタ最低だね」

「!」


「人生はゲーム?人間は物?フザけないでよ!アンタなんかに何がわかんの!!

智輝くんを好きな女のコ達はね、ちゃんと人としての感情を持って智輝くんの傍にいるんだよ!

そんな女の子達の気持ち、一度だって考えたことある!?あたしは拓海くんのこと好きだけど、そんな生半可な気持ちで拓海くんに告白したんじゃない!!」



あたしはつい熱くなってそこまで言うと、はぁはぁと息切れをしながら智輝くんを見つめる。

こんなに熱血になったのは初めてだし、正直頭の中も真っ白だ。

でも、勘違いしてほしくない。そんな簡単に心が変わる恋なんて、そもそも恋じゃないのだ。

あたしだって拓海くんのことが心から本当に大好きなのだ。ただ、理由だけがわからないだけで。



そしてあたしの言葉を聞いていた一方の拓海くんは、そんなあたしの様子に少しの間ビックリしていたけれど、

やがて小さく舌打ちをすると、黙ってその場を後にしてしまった。



「ちょ、待っ…!」