【完】狂犬チワワ的彼氏



そんな智輝くんの言葉にムカついて、あたしは智輝くんを軽く睨むと言った。



「ふ、フザけないでよ!せっかく忘れかけてたのに!」



そう言って、冷たくふいっと智輝くんから視線をそらしてそっぽを向く。

…信じらんない。

出来ればもうずっと逢いたくなかった。智輝くんとは。



だけどあたしがそう思って口を膨らませていると、智輝くんがベンチから体を起こして言う。



「拓海とはもうチューした?」

「!!」



そう言って、ニヤニヤと笑みを浮かべてあたしを見つめる。


でも、



「あ、あなたには関係ないでしょ!」

「ふーん?」



あたしは冷たい口調でそう言うと、智輝くんに背を向けた。

そしてあたしは気を取り直すと、背中越しに智輝くんに問いかける。



「…ってか、何でさっき…拓海くんのフリなんか…したの?」



そう問いかけて、智輝くんの返事を待つ。


だって、そうだ。

智輝くんは、わざわざあたしと直樹の間に入る理由なんてないはずだ。

噂によるとこの人…物凄い遊び人らしいし。


あたしがそう思っていると、やがて智輝くんはめんどくさそうに言った。



「そーでもしなきゃ、さっきのあの男、妃由ちゃんのこと諦めないだろ?」

「!!…え、」


「勘違いすんな。俺は、邪魔者をやっつけただけ。

だってこんなに久しぶりに、“オモチャ”に再会できたわけだし?」