目の前のその人が拓海くんじゃないのは確かだからあたしがそう言うと、
次の瞬間智輝くんがちょっと吹き出して言う。
「ふはっ。
気づくのおせーのな、妃由ちゃん」
「!!」
「そうだよ。俺は、智輝。久しぶりだね?この前公園に呼び出した時以来かな?」
そして智輝くんはそう言うと、悪戯な笑みを浮かべてあたしを見遣る。
一方そう言われたあたしは、智輝くんの言葉に少し考え込むと…
やがて、忘れかけていた最悪なキスを思い出した。
…公園…?
「っ…!!」
あ……ま、まさかあのジュースを口移しで飲まされて、挙句の果てに「下手すぎ」とか何とか言われたあの時の…!
その時のことを思い出してあたしが顔を青くしていると、智輝くんがまた悪戯顔で言う。
「思い出した?あの日は特にあつかったね」
「!!…~っ、」
そして面白そうにそう言って、笑いを堪えるようにクックッ、と笑った。
こ、こいつ…!

