【完】狂犬チワワ的彼氏



そう言うと、掴んでいた手首をやっと離して…

あたしの方を振り向く。


だけどその表情は、意外にも…あたしをからかうようなそんな表情。

明らかに、拓海くんらしくなくて。


でも、拓海くんが怒っているとばかり思っていたあたしは、少し安堵しながら拓海くんに言った。



「そ、そんなんじゃないもん。確かに告白はされたけど、断ろうと思ってたし」

「そのわりには返事までずいぶん間があったけど?」

「!…っ」

「お人よしってやつ?やっぱ、可愛いって罪なんだな」



拓海くんはそう言ってベンチに腰掛け、暑そうにぐだーっとうなだれる。


…けど。



「…ねぇ」

「ん?」



何か…目の前に居るその人が、その瞬間あたしにはいつもの拓海くんとは違う気がして。

恐る恐る…口を開いて、言った。



「あなた…拓海くんじゃないよね?」

「!」


「もしかして…





智輝くん?」