拓海くんは挑発的にそう言うと、あたしを抱きしめる腕に少しだけ力を入れる。
その行動と言葉に、びっくりして…
ドキドキして…思わず、心臓が止まりそうになる。
一瞬、何が起こってるのかわからなかったけれど…
拓海くんの言葉と行動に、直樹の表情が少し曇ったのが垣間見えた。
…直樹…
あたしは、直樹の親友のくせにずっと気が付かなかった。
直樹のことをわかっていたつもりだったけど、
いつもあたしは我儘で…直樹の気持ちを知らずに拓海くんのことを相談して…。
直樹はずっと…どんな気持ちであたしの隣にいたんだろう。
だけど、あたしは「ごめんね」すら言えなくて。
しばらくすると、拓海くんに連れられて映画館を後にした。
「ちょ、拓海くんっ…」
「…、」
その後は映画館を出て少し歩くと、やがて近くの公園にたどり着いた。
拓海くんは怒っている様子であたしの手首をつかんで…少し、痛い。
離してよって言おうとしたら、先に拓海くんが口を開いて言った。
「ずいぶん良いムードだったんじゃね?」
「!」

