【完】狂犬チワワ的彼氏



その声に直ぐ様振り向くと、思った通りそこには拓海くんが立っていて。

拓海くんは、びっくりした様子であたし達を見つめている…。


な、何で拓海くんがここに…!?

ってか、今の会話、聞かれてた!?



「…っ…た…拓海くん…何で」

「…、」



…───マズイ、



早く…誤解を解かなきゃ。


…誤解?


いや、でも何て言おう。


何か言わなきゃ。

何か言わなきゃ。



しかしあたしが内心そう思って慌てていると、少しの間黙っていた拓海くんが、ゆっくり口を開いて言った。



「…暇つぶしに、映画観に来たら、偶然お前らを見かけて…

嫌な予感がして来てみれば…そういうことかよ」



そして拓海くんはため息交じりにそう言うと、ふっとあたしから視線を外して横を向く。



「ちがっ…!」



だけどあたしは直樹の告白をOKするつもりはさらさら無いし、

それを早く拓海くんに伝えなきゃ。言わなきゃ。



でも、そう思っていたら…



「…!?」



ふいに、拓海くんが…

あたしの体を抱き寄せて、直樹に言った。



「悪いけど…妃由は渡さないよ」