【完】狂犬チワワ的彼氏



「……え」





そう言われたその瞬間。



あたしは一瞬、思考回路が停止して。

思わず、歩く足をピタリと止めてその場に立ち尽くした。



…“すき”…?

それって…。



言われた直後は、直樹が何を言ってるのかはわからなかったけど。

でも、その言葉を全て理解するまでは、意外とそんなに時間はかからなくて。


あたしは、しばらく黙り込んだあと、声を振り絞るように直樹に言った。



「……嘘」

「…」

「嘘だ。そんなの、嘘」



直樹は、あたしのことをからかってるんだ。


あたしがそう思いながらそう言うと、直樹がやっとあたしの方を振り向いて、今までに見たことないくらいに真剣な表情で言った。



「…なんで、こんなこと…

わざわざ冗談とか嘘で口にしなきゃいけねぇの」


「だって…」


「嘘じゃない。俺は本気だよ。

もうずっと前から、お前のことが好きだった」