そして、あたしはふいに時計に目を遣ると…
「…お兄ちゃん、あたしこう見えて忙しいから。
今日から付き合いだした彼氏に電話しなきゃいけないし」
「はぁ!?彼氏っ!?」
「そっ。だから、しばらく部屋に閉じこもるね」
そう言うと、あたしはお兄ちゃんに背を向けて自分の部屋に戻った。
「いや、待てよ妃由っ…」
そんなあたしを引き留めるようにお兄ちゃんが後ろからあたしを呼ぶけど…でも、気にしない。
時計の針は、もう21時2分前を指している。
そろそろ木塚くんに電話しなきゃ。
あたしはそう思って携帯を開くと、交換したばかりのその番号を引っ張り出した。
はぁ…緊張する…。
大丈夫かなぁ、
そう思いながら、わずかな時間の中で独り深呼吸をしていると…
「…!」
…―――次の瞬間、
逆に突然電話がかかってきた。

