【完】狂犬チワワ的彼氏



「ま、まさか拓海くんがキス…してくれるなんて思ってもみなかったし。

そ、それに、急に後ろから抱きしめたりするし…。

昼間はあたしのこと、可愛いって言ってくれない上にあんなに冷たかったのに」


「!」



あたしはそう言うと、拓海くんを直視出来なくてそのまま俯く。


愛されてないって思ってたよ。

だってあんなに素気ないんだもん。


でも、あたしがそう思っていると…拓海くんが次の瞬間、自分の頭をもどかしそうに掻いて言った。



「~っ、」

「…?」

「…、ごめん」

「!」

「けど、言えるわけないじゃん可愛いとか。…本気でそう思ってたら、尚更」



そう言って、ばつの悪そうにフイッとあたしから顔を背けてしまう。


…“可愛い”?

“本気で”?



「!!っ…それって…!」



そしてあたしがその言葉にワンテンポ遅れてそう反応すると、拓海くんが恥ずかしそうにあたしに背を向けて言った。



「あーっ!っつか、もういいだろ!一応わかり合えたんだから、一件落着!な?」

「いや、でも今の言葉だけもう一回…!」

「バカ!一回しか言わねぇよドブス!」

「……(ひどい、)」



拓海くんはそう言うと、バーベキューの買い物を先に再開させてしまう。


…ケチ。

可愛いって言葉くらい、はっきり聞いてみたかったのに。


だけど拓海くんの耳が必要以上に真っ赤になっているのが見えて、あたしはそれ以上聞かないことにした。