広喜くんはそう言うと、今にも泣きそうな顔をする亜季さんを慰める。
だけどあたしの方がもうとっくに深く傷ついていて…。
それを知らない広喜くんは、亜季さんの頭に手を遣った。
そして、しばらく泣きそうなのを堪えていたら、亜季さんが静かに言う。
「……もう、いや」
「え、」
「あたし、広喜と別れるっ…」
「!」
「さようなら、」
亜季さんはそう言うと、広喜くんの手を退けて直ぐ様リビングを出て行った。
「っ…亜季!」
すると広喜くんはそんな亜季さんの背中を追いかけるべく、あたしの方を見向きもせずに…
代わりにあたしの肩にぶつかって、そのまま走ってマンションを後にした。
「…っ…」
広喜くん、って…呼ぼうかと思ったけど、そんな勇気はあたしにはなかった。
急に静かになったリビングに勝手に残されて、あたしはいつのまにか頬を伝っていた涙を拭う。
…終わってしまった。
大切にしていた恋が、
無惨に幕を閉じた―――…。

