数秒くらいは体が固まってしまって動かなかったけど…。
2回目にもう一度チャイムが鳴ると、あたしはようやく我に返って玄関に向かった。
もしかして…もしかして…。
嫌な予感を覚えながら、あたしはゆっくりと玄関のドアを開ける。
誰か、別の人であってほしかった。
でも、そんなわけがない。
あたしのマンションに訪れたのは…
「よっ、鏡子」
「…ひ、広喜くん…」
「ごめん、遅れて。合鍵見当たらなくてさ」
ついさっき約束をした、広喜くんだった。
広喜くんはあたしにいつもの笑顔を向けると、遠慮なくズカズカと部屋に上がって廊下を進んでいく。
「っつか喉渇いた。何かある?」
「ちょっ、広喜くんそっちは…!」
亜季さんがいるリビングを行かせたくなかったけど、広喜くんはいつもみたいにリビングに続くドアを開けてしまう。
思わずあたしがぎゅっと目を瞑ったら、暗闇の中で広喜くんが驚いた様子で確かに言った。
「…あ、亜季…?何で、」

