あたしはその人を前に、わけがわからないなか問いかけた。
「え、えっと…どちら様…?」
顔を引きつらせながらそう聞くと、ソファーに座っていた女の人がそこから立ち上がって言う。
「ごめんなさいね、驚かせてしまって。私、広喜のことであなたにお話があって来ましたの」
「…?」
その人は丁寧な口調でそう言うと、自身の左手にある薬指の指輪をあたしに見せながら、話を続けて言った。
「私、有村広喜の婚約者の、高上亜季といいます。
半年後に、広喜との結婚式を控えてるんです」
「!?」
「それなのに私の広喜があなたに迷惑をかけてしまったみたいで、それを今日は謝りに来ました」
その人はそこまで言うと、最後にもう一度「本当にすみませんでした」とあたしに向かって頭を下げた。
だけど…、
「…っ、」
いきなりそんなことを言われて、あたしが今その人に何かを言えるわけがない。
婚約者?
結婚式?
何それ、聞いてない。
ねぇ、何の話?
全然聞いてないよ、広喜くん。
そう思っていたら……
ピンポーン
突如、玄関でチャイムが鳴った。

