早く帰らなきゃ!
あたしは急いで携帯を鞄に仕舞うと、駆け足で部屋の入口に向かう。
だけど、ドアを開けるとそこには薬と水を運んでくれている柳瀬店長がいて…
「…あれ、どうしたの?」
慌てているあたしを見てきょとん、とする柳瀬店長にあたしは申し訳なくなりながら言った。
「す、すみません。ちょっと急用が出来たので、あたし帰ります!」
「えっ」
「本当にすみません!」
「えっ、ちょっと…鏡子っ…」
あたしはそれだけを言って頭を下げると、無我夢中で玄関を探してそこに向かう。
早く…早くしなきゃ広喜くんが来ちゃうっ…。
そう思って靴を履いていると…
「どうしても帰っちゃうの?」
「!」
いつのまにかあたしの背中にいた柳瀬店長が、あたしにそう問いかけた。
その問いかけに、あたしはなんとなく柳瀬店長を見ずに言う。
「い、家に今から友達が来るみたいなので、帰らないといけないんです」
「……そう、」
「では、失礼します」
あたしは柳瀬店長にそう言って、走って自分のマンションに向かった。
…でも、本当は行かない方が正解だった。
まさかこの後、あんなことが起こるなんて知らずに…。

