「で、どうなのよ?彼氏と順調?」


「誰が彼氏よ」


ばりっ、とくわえたじゃがりこを噛み砕く。

花凛がニヤニヤと"彼氏"と言うのはもちろん鈴谷のこと。


あの保健室でのこと話すんじゃなかった。


「でもさぁ、走ってなにしに行ったかと思ったら、アップルシューかい!って感じじゃない?」


「それはあたしも思ったかも」


「もっとロマンチックに指輪でも持ってきたらカッコいいのにね?」


「いらないよ指輪なんか」


そもそも、怪我させといて指輪とか渡してきたら支離滅裂すぎてもうわけわからない。


あ、でも責任取るって意味ではあってるのか?


「そういうわりに、最近も鈴谷と仲良いよね、みや」


「普通じゃない?」


いや、自分でも普通ではないと思う。


だって今まで一言も話したことないのに、ここ一週間ほぼ毎日話してるし。


しかも……


「昨日なんか部活の帰り、待ち伏せされてたんでしょ?」


「そ、れは、偶然でしょ」

ススス、自然と花凛から目を逸らしてしまう。


そう、あたしは火曜と木曜は茶道部で活動してるんだけど、昨日、部室を出たら鈴谷が待っていたのだ。


鈴谷は部活はやってないはずだから、2時間以上は待ったことになる。


「偶然で部室の前にいる!?普通!」


ぶふっ、と吹き出す花凛。


「き、奇跡的な偶然的な!」


「いっ、意味わかんないし!き、奇跡とか言っちゃってるし……」


あー、もうだめだ。

なんでこんなにあたしって嘘下手かな。

顔が赤くなってるのが自分でもわかる。


花凛はついにドンドンと机を叩いて爆笑し始めた。


昼休みでみんな騒いでるから目立たないけど、これを普通の休み時間にやられると、目立ってしょうがない。


小学校から、花凛のツボはおかしいし浅い。


困った癖だな。


「あ、また何に爆笑してんの花凛ちゃん」


横から顔を覗かせたのは、件の鈴谷。


「あははっ、もうおかしいんだよ、みやったら、あのねー……」


「わあぁああぁーーーっ!!!」


慌てて花凛の口を塞ぐ。

だいたい何を言うかなんて予想できるから。