ピンポーン


朝の、日南家にチャイムが鳴り響く。


「はーい」


お母さんが玄関に行くのを見て、あちゃー…、と少し思う。


だって、今来たのきっと雫だから。


あんな金髪見たらお母さん焦って倒れたり……


「あらぁ雫くん?久し振りねぇ!もう、カッコよくなっちゃって!」


……な、なんでわかったの。


恐ろしいなお母さん。

数ヵ月同じクラスにいたのに気づかなかったよあたし。


「あ、雅!雫くんが来てるわよー」


あたしは下りかけの階段を下りて、ローファーに足を入れた。


「知ってるよ」


「もぉ、お母さんに報告は?」


わくわく、とあたしを楽しそうに見るお母さんの横をすり抜ける。


そして玄関を閉めた。

「おい、母さんいいのかよ」


「いいよ、めんどくさいことになるし。……おはよ」


「はよ」


あぁ、顔を見るとどうしても思い出してしまう。


「なーに下向いてんだよ、照れてんのか?雅らしくもない」


「照れてなんかないし」