「いえ。今日は…やめときますか?」
「ううん。もう大丈夫だから。あの、お願いします…」
「さぁうちの手につかまって。」
女はあたしの手を掴んだ。
「はい。」
あたしは連れられて何やら細い紐みたいなのであたしの体に巻きついたり当てたりされた。
「うーん…。あんさん、細いなぁ。」
「そうですか?」
「羨ましいくらいやわ。あ、うち氷雨(ヒサメ)ゆうんや。あんさんは?」
「巳甘…。」
「いい名前やな。」
「ですよね。小五郎さんにつけて貰ったんです。」
「なんか、事情があるんやな。さぁ、次は着物選びましょ。」
「わっ…」
あたしは氷雨さんに引っ張られてつまづきそうになった。
「ごめんな。」
「いえ…」



